「人で勝負する銀行」を目指し、ワーク・ライフ・バランス推進に力を注ぎ続けてきた「仙台銀行」。「職員の自己実現と成長を後押しする企業でありたい」という思いについて、みやぎ働き方改革企業認証、プラチナくるみん、イクボス宣言など見える形で表現。中でも「企業主導型保育施設」の設置が象徴的な取り組みになっているとのことです。
行内の課題解決に留まることなく、取引先の福利厚生充実化、地域の待機児童解消にも目を向けながら「本業支援と地元貢献」の可能性を広げている様子。このような取り組みのベースとなる思いや考えについてお話し頂きました。
地域の子どもも利用できる企業主導型保育施設「ちゃいるどらんど南小泉じもと保育園」
奥平さん:仙台市は待機児童が課題となっている状態が続いており、当行としても育児休業からの復帰がスムーズにできない状況でした。旧支店の土地活用が検討されたこと、企業主導型保育施設制度が始まっていたことなどいくつかのタイミングが重なり、「自分たちで何かできることはないか」ということに。すぐに着手し、関連会社と協議を進め信頼できる取引先の保育事業者に運営をお願いすることを決め、構想から約1年で設置することが可能になりました。保育事業者の提案で宮城県産材活用で補助を受け、子どもたちが裸足で過ごせる木造建築の園舎が実現。定員27名でスタートし、5~6年かけて最大定員の42名を目指す計画で運営しています。
企業主導型保育施設の特徴として、複数の企業が企業枠として入園できること、地域枠として地域住民の子どもの受け入れができることがあります。また、取引先にもこの企業枠を活用して頂けるということで当行の「本業支援」の一環として提案することができます。「職員の復帰がスムーズになった」「求人の際に提携保育施設があることをアピールできる」など、喜びの声を頂いています。
「安心して働ける環境があることの素晴らしさを実感し、この取り組みが続くことを望んでいます」(鈴木さん)
鈴木さん:保育施設ができると聞いていたのですが、ちょうど長女の誕生が重なりました。実家が近く、支援者がいると認可保育所は入りにくいと聞いていたのでぜひ活用したいと考え、パートナーは保育施設周辺で職探し。車で5分の場所に勤められることとなり、以来3年間お世話になっています。
当行からは出向で企業支援係の方が居てくれましたし、面談から丁寧に対応して頂き不安なく入園できました。本人も保育園大好きで毎日楽しく通園していますし、パートナーは私以上に信頼を寄せています。保育園と勤め先が連携しているので手続きもスムーズにでき、子どもは温かな環境で過ごせる。保育園、勤め先、双方からのサポートが連携した状態で得られることは大変心強いことです。
「育児休業後の復帰などは受け入れ体制が重要。復帰する職員の不安解消にも注力します」(奥平さん)
後藤さん:当行では法令を上回る制度も多く、例えば育児短時間勤務は小学校卒業まで活用できることになっています。このようなことは、一人一人の声を直接聞くこと、人事課のアイディアを発信して意見をもらうこと、制度化された後も検証と見直しを繰り返しながら柔軟に対応することなどで実現してきました。職員の声が通りやすい「風通しの良い環境」であるということも言えると思います。
制度ができても活用できなければ意味がないと考えているので、特に行内周知を徹底しています。所属長が率先して働き方改革に取り組んでもらえるよう伝えながら、行内のイントラネットで制度を活用した職員を紹介するなど、働き方改革の必要性が理解され、取り組みが浸透するために情報発信の工夫を続けてきました。
当行は宮城県の経済と地域の人々に貢献することを使命として誕生した歴史があり、「人で勝負する銀行」を目指すことはその使命の根幹となります。ワーク・ライフ・バランスが整うことでそれが進んでいくという考えはもともとあったと思われますし、時代で変化していく暮らしを組織として支えることも使命を果たすことに繋がるのだと思います。
奥平さん:「長く勤めて欲しい」という思いがあるから、職員の声を聞いて世の中の動きと照らし働き方改革を進めてきました。その取り組みの一環として、イクボス宣言や保育施設などがあり、形になることで「この組織は本気なんだ」とはっきり伝わり働き方改革の意識が少しずつ浸透していったと思います。
後藤さん:定時退行日などは、お互いに声をかけ合うことでコミュニケーションが活発になり、職場環境改善にも繋がっています。働き方改革は、誰かが頑張るというものではなく、全体で取り組んで形になっていくのだと感じています。
世代・性別・立場の垣根なく、意欲のある人が活躍できる職場づくりが目標とのこと(後藤さん)
鈴木さん:上司に相談した際、早く結論をもらえるのでスピーディーに仕事が進められます。限られた時間の中で良い仕事ができた時にやりがいを感じます。
奥平さん:意欲ある人の活躍を後押しできていると思います。例えば、パートナー職員から正職員への登用は10年以上前から行っていますが、その中から支店長になった方もいます。働きがい、働きやすさを感じて欲しいですね。
後藤さん:当行のコンセプトとして「職員が楽しみながら仕事に取り組んで、仕事を通して自己実現と成長を後押しする企業でありたい」ということがあります。働き方改革によってメリハリと効率を考えながら互いのプライベートを尊重し合う意識が生まれ、このコンセプトに対して全体で取り組むベースが整ってきました。その声を聞きながら働きやすい環境を一層整備して発信し、歩みを止めずに改革を進めていきたいと考えています。
フラットな関係性を大事にしながら一人一人の声を形にする働き方改革。ボトムアップの側面も大きいとお話されていて、温かな行風が伝わりました。人づくりが進むことで目に見える成果もついてくるという静かな信念が感じられ、徹底してそこに注力するぶれない姿勢。一人一人の力を発揮させる職場づくりについて考えることができた取材でした。